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2003/7/3(THU)
●カプリ島のHP
http://www.capri.net/

●マラパルテ邸
http://www.arcmedia.co.jp/
rasen/watanabe/tw9903.htm
青の洞窟のハプニング、「軽蔑」のマラパルテ邸
 カプリでメプリ。
 オヤジの駄洒落というのは万国共通なのね、と思わざるを得ないのですが、ここカプリはゴダールの映画「メプリ(軽蔑)」のロケ地です。そしてカプリの名所といえば何といっても「青の洞窟」! 港に着いて真っ先に、青の洞窟行きのモーターボートに飛び乗りました。

 モーターボートはだいたい20人程が乗れる小さな船で、満員になり次第出港します。わたしが乗ったボートの約半数は日本人のツアー客。便乗してわたしも添乗員さんの説明に耳を傾けさせていただきました。洞窟まではほんの3キロほどの距離なのですが、到着してから洞窟の穴の中に入る小型船に乗り換えるため、ここで何層ものモーターボートが波にゆられながら次の順番を待っています。どんぶらこどんぶらこと、激しく揺れるボートの中で待つこと30分。青の洞窟を目の前にして、船酔いする人が続出していました(わたしも)。
 ようやく私たちの番が来て、小型船に乗り込みました。わたしはいちばん前に後ろ向きに乗り、船頭をはさんで後方に日本人4人が一緒に乗りました。船頭は陽気でハンサムなイタリア人。自分のカッコ良さをよく分かっています。わたしの頬を撫でながら、「1ユーロくれたら洞窟の中で写真を撮ってあげるよ」ですって。ちゃっかりしてますが、ここは払わざるを得ないでしょう。その内の1枚が上の写真です。さらに、「ひとり2ユーロずつで、順番に写真を撮ってあげるって、うしろの4人にも伝えてくれる?」。やはりちゃっかり値段を釣り上げています!

 それはさておき、洞窟の体験はとてもエキサイティング! 入り口の穴の高さは1メートルにも満たないほどの小さな穴。ここに波の引き際を見計らって、船頭がロープをたぐり寄せながら1艘ずつ出入りします(写真2)。乗客は全員ボートの中に寝そべって、頭をぶたないように隠れています。ここでの船頭のパフォーマンスは見どころのひとつ。船頭全員が何やら大声で囃し立てています。
 洞窟の中は狭いですが、穴からかすかに入ってくる光が、水の上に跳ね返って、なんとも言えない美しい色を作り出しています。蛍光ペンの水色のような鮮やかで透き通ったブルー。船頭は「ヴォ〜ラ〜レ〜、オ〜オ」とカンツォーネを唄いながら、洞窟の中をふた廻りしてくれました。
 そして洞窟から出る瞬間、船頭たちの囃子声が高まるその時、ザッパ〜ンという大きな波が。洞窟から出ると、一番前にいたわたしだけが、頭から全身に水をかぶっていました。外は焼けつくような陽射しだから、濡れた服くらいすぐに乾くだろうし、まるでディズニーランドのアトラクションみたいで、これも記念ダワ、なんて思っていましたが、港に戻るモーターボートの中で気が付きました。カメラも、携帯も壊れてしまってる!
 つい最近デジカメが壊れたばかりで、きょう持っていたのは、ちびまるこちゃんの親友のパパとお揃いの、ライカのカメラ。持ってきたカメラが2台とも壊れてしまうなんて! それにさっきチップを払って撮ってもらった想い出はどうなるの! このところ、イタリア語の辞書も無くしたばかりで、ここまで次々と大切なものが使えなくなると、ショックを通り越して面白くさえなってきます。命にかかわる危険や、お金を盗られたことのないことだけが救いです。

 * * *
 気を取り直してレストランで食事をした後、「軽蔑」の舞台となった、マラパルテ邸に行ってきました。文学ファンのみならず、建築物としても見ごたえのある名所ですが、今は財団の私有地となって閉ざされていることや、街からはるか遠い崖の上に建っていることで、訪れる人はほとんどいないそうです。カプリの中心街から「天然のアーチ」へ向かう途中にある、どこまでも続く急な階段を降りていきます。しかもわたしは道を間違えてしまい、この階段を使わずに、民家の私有地や畑の中を通り抜け、さらに登山道のような崖の中の砂道を、手をつたいながら降りていきました。まわりは人影もなく、林のすき間から海が見えるだけ。本当にこんなところに家があるのかと不安に思いながら、執念で辿り着きました。
 財団の表札のあるところから、プライヴェートと書いてある階段を下って、さらに小さなあぜ道をまわりくねると、ようやく家の姿が現れはじめます(写真3)。映画のクライマックスでブリジット・バルドーが登っていく、あの屋根の階段です。海に向かって崖の上にそびえ立つ、ピンクの階段の家。海の鮮やかなブルーに対比して、崖とともに見事に景色に溶け込んでいます。苦労してここまで来て良かった!

 それからはカプリの街を散策。ひとり一人がやっとすれ違える程の細い道に、白い別荘が続いています(写真4・5)。中心街はお洒落なブティックが並び、多くの観光客で賑わっています。その反面、いちど海に出れば、そこには険しい洞窟や崖が、自然の形そのままに残されています。街並みの美しさと雄大な自然の美しさ。カプリの魅力は尽きることがありません。何度でも訪ねてみたいところです。

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